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血と汗と涙のシート製作記

2019.09.10

7年越しの再会? 東日本大震災を被災したダブルシートの補修。(再掲載)

先日の 『BMW Motorrad Days 2019』では沢山の方とお話しすることが出来ましたよ。

折角お立ち寄りいただいたのに軽い会釈程度しか 出来なかった方も・・・

スミマセン。(;´・ω・)

その中で、実はとても嬉しい出会いと言うか再会がありました。

でも直接お会いしたのは初めてです。

 

2011年3月11日に起こった東日本大震災。

その津波で流されてしまったハーレーのツアラーFLHXのオーナー様です。

後にそのFLHXは廃車となってしまったのですが、同時に破損してしまった弊社ダブルシートはいつかまたと車両から取り外し保管してくれていました。

それから1年少しした頃に補修のご依頼があり弊社にて作業させていただきました。

読んだことある方もいると思いますが、その時の様子です。

以下再掲載を読んで下さい。

 

 

2012年5月23日のエントリーを再掲載します。

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今まで随分と沢山のシートを売ってきました。

『距離を走ったから』 とか 『レザーが何かの拍子に裂けてしまったから』 や、 『イメージを変えたい!』  『中古でシートを手に入れた!』 なんて理由は個々様々なのですが、以前に比べてレザーの張替え依頼が増えてるんですね。

大体、スポンジをそのまま活かしてレザーの張替えのみです。

スポンジが経たって腰が無くなるほど乗るのは大変です。

今まで何度も10万キロ走ったというシートの張替えしましたが、スポンジの弾性は問題無く、硬化したレザーのシワでサイドのスポンジが少し削られた程度でした。

オーナーに馴染みきったスポンジですから、オーナーと相談し、削れた部分をペーパーで均して新規のレザーで張り直して納めました。

ゴムの足もフェンダーやらフレームに当たり馴染んでいましたが、硬化が少しあったのでそれだけは新しくしましたね。

 

ということで、

 

 

今回、この ツーリングファミリー用ダブルシート を張替えます。

でもね。

今まで請け負ってきた物と事情がちょっと異なるんです。

 

 

先の震災を、気仙沼で被災した方からの依頼なのです。

震災についてはさて置いて、問題は、海水を含んでいると言う所・・・。

張替えのシートと共に、印刷されたこの写真が同梱されていました。

オーナー様に相談し、このブログで掲載の許可をいただきました。

だから自分が何でどうこうと言う話ではありませんが、こういう事があったのだという証になるかと思い掲載させてもらう事にしました。

人それぞれ思う事あるでしょうが、興味本位でも良いと思います。

画像大き目で上げてあるので是非見てみて下さい。

 

 

手前の水路にハンドルだけ出ているのがシャベルのFLHで、横たわっているFLHXの方は、同じように水路に水没していたのを引き揚げたそうです。

普段あれだけ重い重い言って取り回しているハーレーのツアラーが、こうやって流されてしまうんだからすごい力だったんでしょう。

以下オーナー様の弁。

『昨年の津波で家と家族とバイクと全てを失いましたが、流されたHDを見つけ、いつかまた乗ろうとシートだけ外しておきました。

結構シートは破れてますがアンコや台座は大丈夫です。

しかしアンコが水を吸ってますので乾燥しているかどうか、又泥が奥の方まで入り込んでいると思います。

そのまま使用してよいのか判断がつきません。

今月またFLHXを新車で購入しました。

ストレスだらけですが、バイカーはやっぱりバイクで解消しないと身がもちません。』

今回張替えの依頼を受けましたが、被災した方からだということで特別な事は致しません。

心情的な部分はありますが、いつも通りの作業です。

料金も通常通りいただきました。

しかし、自分が思った所で何も変わらないのですが、またバイクに乗ってというのは正直嬉しく勇気を貰えた気がします。

同時に、自分達のシートがそこに介在しているのを誇りに思ったりもしました。

 

 

これがそのシートの表側です。

レザーが破れてしまっていますね。

いただいた写真ではレザーがあるように見えるので、オーナー自ら中を確認したのでしょうか。

 

 

こういうのを土気色と言うんでしょうか。

通常、スポンジに浸水したとしてもこういう色にはなりません。

やはり、海水の仕業なのでしょうかね。

そして、兎に角重い。

表面こそ乾いていますが、内部の水分が抜けていない証拠です。

 

 

店に置いてあった試乗用のシート。

勿論、同じダブルシートです。

 

 

大体 4キロ弱か。

 

 

今回のシート。

 

 

7キロ強。

3キロちょいの水分 (海水) が含まれているってことでしょう。

 

 

先ずは、レザーを剥がします。

レザーは、糊とネジ併用でシートベースに固定してあります。

ネジは回せば外れますが、糊の除去は結構しんどい作業です。

ちなみに、これは同時期レザーのみの張替え作業していた別のシートです。

 

 

綺麗に糊を剥がさないと、張替えの際に糊の上塗りになってしまいきれいに仕上げる事が出来ません。

裏側だろうが張替えだろうが手抜きなんかしませんよ。

 

 

レザーを剥がしさえすれば吸い込んだ水分を抜くことも出来ますが、抜いた後に残るかもしれない塩分が、どんな悪さをするか分からない。

距離を走りスポンジも馴染んでいたというお話でしたが、結局スポンジまで交換させてもらいました。

 

 

新規に縫い上げたレザーを用います。

 

 

レザーの張替え完了。

シートベースは、ポリッシャーを使い簡単に磨いてあります。

これは、新品でも同じ製作工程ですね。

深い傷は消せませんが、それなりに綺麗になります。

新品とはまた違った風合いです。

 

 

前後の取り付けステーも再研磨します。

 

 

外刃ワッシャーを入れ、ボルトにロック剤を塗布してから取り付けます。

ここらのショートパーツは、全て新品に交換します。

 

 

最後は手締めで外刃が潰れればOK。

 

 

純正シートボルトの刃付きワッシャーの痕だけ残っていますね。

 

 

タンデムベルトも新規に用意です。

 

 

一番上の画像からここまでになりました。

 

 

シートベースの少しの隙間からスポンジまで交換したのが見て取れます。

 

 

本日出荷しております。

またこのシートで沢山走ってご自身の身体に馴染ませて下さい。

有難う御座いました。

 

 

そして、BMWにも乗っておられるオーナー様が今回の白馬で弊社出展していると知り尋ねて来てくださいました。

嬉しくって手を握らずには居られない。(笑)

でね。

今まで、何故シートだけ取り外しわざわざ手間掛け直したのか深く考えることもなかったんですよ。

改めて良く考えれば、車両は新しく買い直していたわけですし、シートも新しくしても良さそうな気がします。

そして、今回お会いして初めて聞いた話。

自宅から用水路まで流されてしまったFLHXとFLHの2台のハーレーダビッドソン。

その用水路は自宅から400mも離れた場所だったそうで、水面から半身露出したFLHXのみ自衛隊が重機で用水路の脇に引き揚げてくれたんだと。

写真を見ると、確かにFLHの方はハンドルだけしか見えていないのでこれでは作業出来ない。

後に友人に手伝ってもらいFLHも引き揚げたそうですが、やはり海水塩水ですから2台とも廃車にしたそうです。

 

で、このシート。

そのFLHXで奥様と良くタンデムツーリングをしたそうで、その思い出がこのシートに沢山詰まっていたという事でした。

だからシートだけは捨てられず車両から外して取って置いたんだと。

その話を聞いてなんだかとっても複雑な思いが湧き出してきましたが、

『直して良かったですよ。今も使っているんです。ホントにありがとうございました。』

なんて笑って言っていただけたので、今度はとても嬉しくなってしまいました。

こちらこそがありがとうございますなのにぃぃぃ。 >_<

 

傷んだレザーとスポンジは交換してありますが、他シートベース掃除、ステーなども磨き直しして再利用しました。

何にしても思い出は消えませんからね。

シートって思い出も乗せられるんだとちょっとホロッとしてしまいました。

思い出も運ぶなんて四半世紀近くこの仕事に従事してきて初めて知りましたよ。

今でも新しい気付きに出会える。

ありがとうございました。

会えてうれしかったです。

 

 


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